娘が産まれた次の日に産婦人科へ自分の車で両親を連れて行った。
駐車場の少ない街中の産婦人科だったが幸いすぐ近くに親父の知り合いのお店があり、そちらで駐車スペースを貸していただけた。
車を停車させて、お礼の挨拶をするためにお店に入るとその知り合いの店主さんがニコニコしながらウチの親父を「やっとお爺ちゃんやな!」と茶化してきた。
その後、嫁の居る病室へ移動して我が子を代わる代わる抱っこしたのだが全員疑いようもないくらいデレッデレで親父がスマホを取り出してシャッターを切ったのを合図に撮影会状態になった。
まあデレるのは仕方ない。
何故なら両親は孫の顔は見れないと諦めていただろうから(笑)
その翌日は弟がわざわざ会社を休んで来てくれた。
乳幼児をあやした事のない弟は自分と嫁が生唾を飲むくらいぎこちないポーズでウチの娘を抱き抱えていた。
さらにその次の日には姉貴も来てくれた。
出産から休む暇がないくらい幸せ続きで楽天的な自分はその空気を楽しむばかりだったが嫁は夜独りになると寂しさと正体不明の不安感で少しだけナーバスになっていたようだ。
多分、これは俗に言うマタニティブルーと言うやつなのだろう。
いくら自分が慰めても本能から来る不安はどうしようもないようで出産の翌日の夜は涙と動悸が止まらなくなったらしかった。
「はやく家に帰りたい…」
そう呟く嫁を宥めて後ろ髪を引かれる思い思いで産婦人科を後にしたのだった。