予定日の2月12日を6日過ぎたが嫁は陣痛の兆候もない様子だった。
その大きくなり過ぎたお腹と体調を心配しながらいつも通り仕事を始めた18日の夜勤。
休憩時間にスマホを見るとLINEで前駆陣痛が始まったらしい とのメッセージが届いていた。
ただまだ前駆なのでそれほど酷い痛みではないらしくお腹も全然下がって来ていないこともあって、まだ大丈夫だろうと判断し、もしもの時は電話をするように言ってそのまま仕事を続けた。
そして朝の6時半。もうすぐで仕事が終わると言う時に最後の片付け作業をしていた自分の所へ上司が急いで走って来て大声で
「嫁さんのお義母さんから電話があった。すぐ帰れ!」
そう言われ途中だった作業も後を任せて放り投げ大急ぎで産婦人科に向かうことになった。
会社を出るまでにすれ違った数人から「慌てると事故を起こすぞ!」と言われながら車に飛び乗って一路、嫁の元へ。
朝7時の混み合う幹線道路を抜けて産婦人科に辿り着くと2階の産前室で苦しそうにしながらお義母さんと助産師さんにマッサージを受けている嫁の姿があった。
名前を呼ぶと自分の顔を見た嫁は少し安堵した表情になって「お仕事お疲れ様です」と言った。
しかしその様子は依然苦しそうで助産師さんに諭されてひたすら手を握って応援していたが
「もう帝王切開にして」
「先生まだ来ないの!?」
「次の陣痛が怖い、耐えられそうにない」
と、うわ言のようにそう呟いていた。
その表情は本当に苦しそうで痛みで嫁が死んでしまうのではないかと真面目に心配したほどだ。
やがてそんな状態が2時間ほど続き陣痛間隔があまり短くならないと言う事で人工的に破膜させてからようやく分娩室へ移動になったのだった。
続きます