≪後編≫
しかしJAFに救助要請を出したはいいが場所が僻地なため到着するまでかなり時間がかかるらしかった。
仕方なく自分たちは待っている間、通過していく車を横目に見ながらスマホで映画や動画を見ていた。
すると10分ほど経っただろうか、運転席側のすぐ横に人が現れ何か話しかけて来る。
JAFが来たのか?結構早かったなあ
ドアを開けると50〜60代くらいの男性がすぐ傍に4駆らしき車を停め「兄ちゃんたち大丈夫?引っ張ってやろうか?」と親切に申し出てくれているのだ。
「JAFを呼んだので大丈夫です。親切にありがとうございます」
そう言って頭を下げると少し寂しそうに、でもニコニコしながらその男性は去って行った。
その後、もう一人同じような年代の男性が声をかけて来てくれてお礼を言うとやはり同じように去って行ったのだった。
2人で車の中で「日本もまだまだ捨てたもんじゃないね」となんだか温かい気分になっていると今度は短い茶髪をオールバックにした作業用のツナギの若い男性と色黒の年配の男性の2人組がすぐ後ろに大きなトラックを停めて
「どしたん?滑ったん?」
と車の周囲をまじまじと観察していた。
ちょっとコワモテ風の二人組に先の2人と同じように「JAFを呼んだので大丈夫です」と言うが、見ると既に年配の男性の方は自分の車の後輪に牽引用のベルトを繋ぐ場所を探していて
「後輪に結んで引っ張るけん兄ちゃんは車に乗ってハンドル握っといて」
そう言われ断るのもなんだか断れない空気で車に戻るとすぐに車は引っ張られ脱輪していたタイヤはあっと言う間に道路上に戻った。
ペコペコと頭を下げる自分たち2人に男性は
「この先はもっと酷いけん諦めて戻った方がいいよ」
そう言って素早くトラックに戻り、すぐに引き返して行った。
「いや、災難だったけどいい人だらけだったなあ」
JAFにお断りの電話をした後、彼女とそんなことを話しながらもと来た道を引き返している途中、自分たちが呼んだであろうJAFの車とすれ違ったのだった。
悪いことしたなあ。