5月上旬。
やはり恋愛経験に乏しい自分が次のデートの場所がなかなか決まらず悩んでいると彼女から
「ボートに乗りたい!」
と提案された。
ボボボ、ボートォ!?
確かに安っぽい昔のドラマでもよくあるように恋人同士はボートに乗るのが常識らしい。が、手漕ぎのボートなどそれなりの訓練を受けた人間が幾多の試練を乗り越えてやっと乗ることが許されるもの(※完全に個人的な偏見です)であって、この運動神経皆無な自分に操縦できる自信はあるはずもなく少し…いや、かなり不安だった。
そもそもボートなど乗れる場所がどこにあるのかも分からない。分からないものは乗れるはずもない。
安堵なのか困っているのか自分でも分からなくなっていると彼女から「しだか湖にありますよ」と言われ、どうやら行く気満々の様子。
…まあ何事も経験よの…
腹をくくれば後は全力で臨むのみ。そう思っていると更に彼女は
「あ、でもしだか湖でボートに乗ったカップルは別れると言う噂もありますね」
言いながらも彼女がちょっと楽しそうだったので「じゃあそのジンクスを打ち破ってやろう」と言うことで次のデートはしだか湖に決定した。
そして当日
5月のしだか湖はまだ肌寒く風も少しあった為、比較的軽装だった自分たちは震えながらボートへ。乗り込む時にボートが揺れて「これは落ちたらシャレにならない」とかなり緊張し慎重にオールを漕いだ結果、舟は全く思った方法に進まずに同じ場所をぐるぐると回っていた。
やがて少しずつ慣れて来て湖を一周しようと松林のある湖岸の方向へ航路を進めたその時、あることに気づく。
「あれ?この風景見たことあるぞ!?」
デジャヴ?いや、違う
あの松林のところで母が松ぼっくりを拾っていた遠い記憶…
父親が漕ぐスワンボートに弟と2人で乗せられて、何故かどちらかがお菓子を湖に落としたことまで思い出した(確かチョコボール)
うろ覚えだがその頃は小学校低学年くらいなので、ざっと30年前の記憶になる。
奇しくも父と同じ場所で想い人とボートを漕いでいると言う珍妙な現実。まあ無論父の場合はもう結婚して自分たちという子供がいたわけだが。
急に懐かしくなって思い出に浸っている間、彼女は寒さでひたすら震えていました(気づけや)
その日の夜、父親にそのことをメールすると「ああそんなこともあったなあ」と軽く流されました(笑)
まあ近くはない場所とはいえ同じ県内だし、これからもこんな事あるのかなあ…
母は今リウマチを発症して少しだけ手足が不自由になったけれど、それでもいつも幸せそうにニコニコしています。
自分も妻と、そしてお互いの両親をいつまでも同じようにニコニコ笑えるようにしてあげられたら良いなと思いました。
おしまい
…じゃねぇよ!つづきますよ!!