ある日彼女が高校生の時から使っていた自転車が壊れたので新しい自転車を買いたいと言ってきた。
高校からと言ってもその時は大学3年なのでまだ6年ちょっと。
ロードバイクに乗っていたことでそこそこのトラブルなら対処できると少し自信のあった自分はとりあえず彼女に自転車を見せてもらうことにした。
自転車を見て、ほどなくして自分の小さな自信は粉々に崩れ去る。
なんと後輪のスポークが根本から折れ、中央の部分(ボス?)に巻き付いてしまっている。それが原因で踏み込みが重いだけでなくラチェットが働かなくなってバックもできなくなっていた。
「これは修理するより買い直す方が早いね」
そう言うと彼女は少し残念そうにしていたがバイトに行くのに自転車が必要なこともあって猶予もあまり無かったので、すぐにサイクルショップへ行くことにした。
サイクルショップで色々な自転車を見ているうちに彼女がロードバイクが好きだったことを思い出し、ロードバイクを薦めてみたが持ち合わせがなく更に高価であることを理由に首を縦に振らない。
そこは山ほど年上の自分を素直に頼って欲しかったのだが付き合い始めて一回も金銭面で自分に(と言うか他人に)甘えることがなかった彼女は「必ず貯金して返す」と言う条件で渋々了承し、ロードバイクを買うことにしたのだった。
選んだモデルはLGS-WSR。有名なルイガノ社の一般的なアルミフレームモデルで初心者にも手軽に薦められるグレードだ。
好きだったロードバイクを手に入れて嬉しそうな彼女だったが自分は後日結構後悔させられることになる話はまた別の機会に…
いつか一緒にロードバイクで走れたらどんなに楽しいだろうか。
その時はそんな妄想をしながら自転車を狭い車のリアシートに詰め込んで彼女の家まで送って行ったのだった。
つづく