やがて目的のお店が近づいて来たが自分はと言うと未だ緊張感から解放されず表情も硬かったかもしれない。
お店はビルの二階にあり、一階の前の通りはバス停になっていて大勢の人でごった返していた。
その様子が見える辺りまで来た時に女の子1人が「あ、もう1人の子が居ました」とバス停のところに居た1人の女の子を指差した。
白いダウンジャケットを着て髪はショートカットの小柄な女の子がこっちを見て手を振る。
(…ちょっと硬直してる?)
軽く初めましての挨拶をしてお店のある2階へ上がると男性陣は既にお店の中で待っていてすぐに会は始まった。口下手でありきたりな内容の話しか出てこない自分の代わりに助っ人に呼んだ…自分の番号を店員の女の子に渡した後輩(既婚)が場を盛り上げてくれた。
年代は山ほど違うが会話は心配していたより全然スムーズで特に話題に困ることもなく楽しく会は進んだ。
そんな中、隣にいた同僚が
「あー、これはお前と合いそうだから任すわ」
そう言って自分に回してきた相手は例の最後に来た小柄な女の子だった。聞くと日本酒とロードバイクに造詣が深いらしい。
改めて見ると少しだけ細い目にキッチリと切り揃えられた髪は真面目で几帳面そうな印象を受ける。
まだ少し緊張の残っていた自分は先ず日本酒の話題から話してみることにした。
すると本当に結構な銘柄のお酒を知っていて自分なんかよりずっと細かく味やおつまみについて嬉々として話すのだ。その折に彼女から何でもない質問をされたのだがその言葉に面食らってしまった。それは
「○○さんがお酒を飲む時のアテは何ですか?」
はて?アテ??
聞くとオツマミのことらしいが普通は酒飲みのオッさんが使う言葉である。聞き返した自分に少し恥ずかしそうに彼女は笑う。
次にロードバイクの話題になるとマニアックなメーカーの名前にも難なくついて来るが、なんとまだロードバイクに乗ったことがないらしい。そして何より面白いと思ったのは「フレームだけでも部屋に飾っておきたいくらい好き」という事。
なんと言うか彼女との会話には共通点が多く、山ほどある年の差も気にならないくらいシンパシーのようなものを感じてしまった。
少なくとも38年生きて来てこんなに会話が楽しいと思える女性はいなかった。
楽しい雰囲気のまま一次会は終了。二次会はカラオケに行こうという事になりそこで前髪パッツンの子とポニーテールの子が今日はもう遅いのでと言うことで離脱。
…今回はここらで次回へ続きます